3D写真撮影のワンポイント

雲の立体感を表現したい!

　ニフティーサーブ教育実践フォーラム専門館（FKYOIKUS）の【理科の部屋】では、 理科教育に関する様々な取り組みが活発に行われています。
　私が取りまとめ役を仰せつかっている【飛行機から見た雲の教材化】プロジェクト (^_^)もその中の一つです。
　これは「飛行機から見下ろす雲は非常に立体的に見えるが、これを気象分野の教材 として活用できないだろうか」という着想からスタートしたもので、関心を持ってい ただいた方々と情報交換を行い、現在、地道に資料の蓄積を進めているところです。
　この『雲の立体感』を表現する記録手法として浮かび上がってきたのが3D写真で した。

3D写真の原理

　ものを見るとき、右目と左目では少し違って見えます。これを視差といいますが、 人間はこの視差を大脳で処理して、立体視を行っています。
　3D写真とは、左右の目の代わりに2台のカメラを横に並べて（または1台のカメ ラを平行移動させて）撮影した2枚の写真を『（視線）平行法』または『（視線）交 差法』で（右のカメラで撮影した写真を右目、左のカメラで撮影した写真を左目で） 見つめることにより、疑似的に立体感が得られるようにしたものです。

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　　　　 | 左 ｜ 右 | 　　　　　 | 右 ｜ 左 |
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　　　　　左目　右目　　　　　　　左目　右目　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　＜平行法＞　　　　　　　＜交差法＞　　　　　　　　　　　　　　　　

　一時流行したランダムドットの3D絵やディズニーランドなどでみられる3D映画 なども、この原理を利用したものです。

3D写真撮影法あれこれ

　おそらく最も簡単な3D写真の撮影法は、レンズ付フィルムを2つ横に連結して同 時にシャッターを切る方法でしょう。ピントが甘い、画質がイマイチなどの欠点もあ りますが、どこでも入手が可能であり手軽に3D撮影ができるという点で、覚えてお くと便利かもしれません。

　またレンズ付フィルムの中には『3D』と名前のついたものも存在します。これは 専用のプリント方法で1枚の写真の中に右画像と左画像を埋め込み、そのままで立体 視できるようにしたものです。ただしこの方法は、取扱店が限られている、単価が高 い、専用プリント処理が必要、基線長が固定されており近くのものしか立体視できな い、などの欠点があり、あまりお薦めできないと思います。

　また一眼レフタイプのカメラであれば、『ステレオアダプター』と呼ばれるフィル ターネジに取り付ける下の図のようなアタッチメントが発売されています。
（図の斜めになった部分が鏡になっている）


                ____
　　　　　　＼　＼／　／　　　<----ステレオアダプター
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         |   カメラ本体   |

　残念ながら私は使ったことがありませんので、使用感などの報告ができませんが、 横位置で撮影した1枚の写真のなかに、左右の画像が縦長に写し込まれるもののよう です。

　ここでは、そういったアタッチメントなどを使わずに、お手持ちのカメラ（どんな 形式のものでも可）1台だけで行う3D撮影の方法についてのポイントをまとめてみ たいと思います。

3D写真撮影上のワンポイント

日光の向き

　立体感を表現するわけですから、陰影が非常に重要になってきます。
　順光（撮影者の背後から太陽光線が当たっている状態）では影が写らず、いかに3D といえども、のっぺりとした写真になってしまいます。撮影にあたっては、太陽 光が撮影者の斜め後ろから当たるようにすると具合がいいようです。
　私たちが行っている雲の撮影についても、飛行機に乗る時間帯と路線によって、 進行方向のどちら側の席がいいか、なんていう話題もありました。

撮影間隔

　これは撮影する対象までの距離が問題になってきます。
　スケールの大きな対象を3D写真に収める場合、人間の左右両眼の幅（基線長） では視差が十分ではないため、立体感をあまり感じることができません。
　そこで、撮影対象の大きさによって、基線長を長くとり（1枚目の撮影後、カメ ラを平行移動させ、2枚目の撮影を行う）、立体感を強調する手法を用います。
　撮影対象のスケールと基線長の長さの関係については、理論的に求めることもで きるでしょうが、トライ＆エラーで条件を変えたものを数カット撮影しておき、最 も良いものを選ぶようにすればいいと思います。
　飛行機から雲を撮影する場合は飛行機の方が移動していますので、1枚目と2枚 目の撮影の間隔を5〜10秒おくようにすれば、適当な基線長が得られるようです。

露出

　最近では殆どのカメラにオート機構が備わっていて、露出について難しく考えな くても、適正露出の写真撮影ができるようになりました。 　しかし、1枚目と2枚目の撮影の間に光の条件が変化してしまうと、このオート 機構が災いして、同じものを写しても色合いが変化してしまうケースがあります。
　3D写真では2枚の写真を頭のなかで「合成」して2枚の立体写真として見るわ けですから、色合いが異なると困るわけです。
　オートロック機構の付いているカメラでは、1枚目と2枚目の撮影条件を固定し てしまうことによって、これを防ぐことができます。（マニュアルモードで撮影す る手もあります）

• 構図

  　1枚の写真を横に並べて、左右同時に見つめなければなりませんので、左右に細長 くなると非常に見にくくなります。従って撮影時にはカメラを縦位置で構え、縦長の 写真を撮ったほうが後で見やすいと思います。
  　また、中心となる撮影対象の手前に前景となるものを写し込めれば、遠近感がより ハッキリして非常に効果的です。

• 整理法

  　これは蛇足ですが、3D写真の整理法について私は次のように行っています。
  　撮影済フィルムを同時プリントに出しますと、私の利用している写真店では整理用 として１ページにサービス版が2枚入る小さなフォトアルバムをくれます。
  　このアルバムの1ページに対となる2枚の写真を並べて収めておけば、そのまま立 体視することができて非常に便利です。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 池田勝利＠関西創価学園 　pfg03344@nifty.ne.jp