シジュウカラガンの河口湖での繁殖について　

国立環境研究所 地域環境研究グループ　春日清一さん

(写真は春日さん提供、以下同じ)

---

　1994年3月26日12時30分、河口湖生物調査中に、シジュウカラガン(Branta canadensis) が一定水域から移動せず、テリトリー行動をとっていることを確認した。
　湖内では多くの釣り舟が出ており、これらが近づくことを警戒していた。

• 湖岸の貸しボート屋さんからの聞き取り調査
  1. 　3・4年前から、この水域にこのガンが居着き、投げられる餌を取るようになり、 現在では、呼ぶと湖岸に上がり、直接餌を取る。

  2. 　昨年は営巣し、6羽の雛が孵った。 しかし、このうち2羽は鷹などに襲われ、現在4羽が成鳥となった。
     　この4羽は、3月中旬まで親鳥と共に居たが、最近親鳥が営巣を始め、 子ガンを激しく追い払うようになり、ここ2・3日姿が見られない。

  3. 　昨年の育雛期には、親鳥2羽が雛の前後を守り泳ぐ姿が見られ、 湖岸の藻を食べていた。

  4. 　渡りは行われていないらしい。

　3月27日16時20分、再び湖岸を訪れ、写真及びビデオ撮影を行った。
　釣り人が少なくなり、湖岸で釣り舟屋の人が呼ぶと、鳴きながら近づき、直接手からパンを食べた。 多くの写真及びビデオで記録した。

• これからの問題点
  
  1. 　親に追われた4羽の子ガンは何処に行ったのか。
     　親鳥から離れ、餌付けされた個体が、摂食・繁殖が可能か。
     　また、(渡りを行わない)他の群れに会うことが出来なければ、 近親交配の心配があり、対策が必要である。

  2. 　河口湖に居着いたのは、餌付けにより摂餌環境が保証されたことによっていると思われ、 湖岸に藻がなくなる冬季の餌は投餌によるしかなく、飼育体制を確立する必要があろう。
     　これは、翌年の産卵・育雛にも影響を与えるであろう。

  3. 　調査を十分に行い、保護対策をとらなくてはならない。 調査体制の確立が急がれる。