シジュウカラガン シジュウカラガン(Branta canadensis leucopareia)の識別 シジュウカラガン

Paul Springer


aleutian.gif
　シジュウカラガン（Aleutian Canada Goose）は体重3 1/2〜5ポンド（1560〜2260g）の、カナダガン（Canada Goose、以下 CG と略記）の小さな亜種で、ヒメシジュウカラガン（Cackling CG）よりほんの少し大きい。 そして、一般に、ねずみ色がかった褐色の胸を持っている。しかし、（紫色がかった色合いなしの）ヒメシジュウカラガンほど暗くはなく、チュウショウカナダガン（Taverner's CG）およびチュウカナダガン（Lesser CG）ほど明るくはない。
　成鳥のシジュウカラガンの首の基部には、1/2〜1インチ（13〜26mm）あるいはそれ以上の幅のある、顕著な白い輪がある。 最初の秋および冬の幼鳥では、この白輪はないか、あるいはほんの少しの白い羽が見えるだけである。
　ヒメシジュウカラガンおよび他の亜種にもときおり白い首輪が見られるが、それは一般にはシジュウカラガンのものより幅が狭く(時には細片だけ)、通常、ほとんど完全な輪になっていない。別の亜種の中には、通常ない特徴であるが、狭くて暗い羽毛の線が、ジュウカラガンの胸と白い首輪の下の部分を分けている。

　シジュウカラガンは、同じサイズの他のカナダガンの亜種が丸い頭を持つのと対照的に、急な額と扁平な頭を持っている。 そして普通は、頭部下面の黒い羽毛によって、頬の白斑が分割されている。しかし、この特徴は多くのヒメシジュウカラガンとチュウショウカナダガンと共通である。

　嘴（culmen）の長さは、一般に1 1/4〜1 1/2インチ（32〜38mm)、極端な場合でも30.5〜39.5mmの範囲である。 この範囲は、嘴の長さが1 1/4インチをめったに越えないヒメシジュウカラガンと区別できる。 しかしながら、シジュウカラガンとチュウショウカナダガンの嘴の長さは、大きく重なっている。＊1/

　シジュウカラガンの鳴き声は、「キャク キャク キャク」と高く早いピッチの声だが、これより少し高い鳴き声のヒメシジュウカラガンの鳴き声と区別することは困難である。
　シジュウカラガンより大きな亜種の鳴き声は、体の大きさに伴ない、次第に低く遅いピッチの声となり、最も大型のオオカナダガン（Western CG）はホーン、ホーンと鳴く。

　シジュウカラガンは、アラスカにあるアリューシャン列島の特に西端にある少数の島で、最初に巣を作る。 それは、秋にアラスカ湾を横切って東アリューシャンから移動すると考えられる。
　カリフォルニア北部海岸のクレッセント市周辺では、多くの鳥が10月中旬に上陸を始める(より少数のガンはオレゴンの低地海岸にとどまり、また、時によってはワシントン州でも見かける) 。 しかしながら、大多数は、カリフォルニア州のColusa近くにあるサクラメント川のButte Sink（ここで、クレッセント市からの鳥が加わるのかもしれないが）に向かってまっすぐ移動する。
　クレッセント市とColusaの両方からやってきたガンは、11月中旬に渡りを始める。しかし、何羽かのガンは、12月いっぱいColusaの近くに残る。
　彼らがもっと南に移動する時に、少数のガンがサクラメントのサンホアキン川河口に残るが、大部分は、サンホアキン川北部、特にModesto地域の南からLos Banos地域へ向かって飛ぶ。 彼らは2月まで、北へ飛ぶ春の渡りの集結地であるクレッセント市周辺で冬を過ごす。 オレゴン州南岸に沿った島にとどまったり、ワシントン州南岸のWillapa湾地域一帯を通過しながら、大部分は3月と4月に出発する。

　東中央アリューシャン列島のChagulak島の繁殖個体群を含むガンは、サンホアキン川へ移動する前にサンフランシスコ湾北東部のEl Sobrante地域で、11月後半から2月前半まで越冬する。

　アリューシャン列島とは別と見なされる個体群は、アラスカ半島南部のSemidi島で繁殖し、オレゴン州の太平洋岸の都市の近くで越冬する。 彼等の到着と出発の日は、西部アリューシャン列島の仲間と似ている。

　金属足環に加え、シジュウカラガンは青、黄、赤あるいは緑の色足環をつけられ、また、何羽かは灰色の首環をつけられている。

　カリフォルニア州で越冬するシジュウカラガンの個体数は、1975年春の790羽から、1989年秋には約6300羽までに増加した。
　個体数が増加した要因の多くは、主にカリフォルニア州での3つの主要な移動経路と越冬地での全てのカナダガン猟を禁止したためである。 近年、かつてシジュウカラガンが繁殖していた島からホッキョクギツネが根絶され、ガンの繁殖個体数は再建されつつあり、いっそうの回復プログラムを助けている。


*1/ 未知の亜種の標本に対して、異なるシジュウカラガンかどうかを区別する判別関数分析が、Douglas H. Johnson, Daniel E. Timm および Paul F. Springerによる「太平洋でのカナダガンの渡りの経路に関する形態論の特性」に含まれている。（Robert L. Jarvis および James C. Bartonek編集、1979年、オレゴン州立大学出版局、Corvallis OR発行、「太平洋のガンの渡りの経路の管理と生物学」pp.56-80）


ポール F. スプリンジャー(Paul F. Springer)−1990年
日本語訳：久米宗男
呉地正行